人が乗っても乗らなくても競う本能で「自分が誰よりも一番前を走るんだ〜」という闘争心を持つのがお馬さん。
その特性を活かして競い合うのが「競馬」。
騎手はお馬さんの運転手で走ればマイペースで行ってしまうお馬さんを上手にコントロールしながらお馬さんの気分を損ねないようにお馬さんと一体となってゴールを目指し、馬は名馬になって子供達にその血を繋いでいくのが目標です。
競馬のコースは1000m〜4000m前後と様々。陸上にも一息で走る100m走やペース配分をコントロールしながら走る2000m走などあるように、競馬もたくさんの距離が用意されています。
競馬を観ている側も運転する騎手も今何メートル走かは分かっているけど、お馬さんには距離がわからないし基本的にはゴール板も理解できないのでマイペースに一番先頭に立つために一生懸命走ります。
ゴール前に先頭に立ったら満足してしまうと走ることをやめてしまうお馬さんもいるので、ムチやハンドル操作で、もう少しだけ頑張ってと叱咤激励し、気を抜かせないことも騎手の仕事です。
一見わらわら固まって走って見えるけど、先行して前を走る子、中団で追走する子、最後方をゆったり走る子と、お馬さんにはそれぞれ走るポジションがあって、先頭なら逃げ粘り戦法や、後方ならゴール前に最後に一気にペースアップして先頭に立つ戦法などで駆け引きが行われます。
お馬さんの性格も様々で、おっとりした子や、やんちゃな子、気の小さい子や気の強い子など個性豊か。
例えば気の強い子は気持ちが先へ先へ行くので、先頭に立って自分のペースで走ったほうが気分よく走れるだろうし、短距離戦が合うかもしれない。
気の小さい子はお馬さんの群れの中に埋もれて走るのが怖いなら後ろから、もしくは先頭で他のお馬さんと離れて走るほうがスムーズに走れるかもしれないし、個性によって走るポジション、いわゆる「脚質」が決まることもあります。
お父さんお母さん、おじいちゃんたち先祖から引き継がれた体の造りや心肺機能、性格などで適正距離が各々あり、胴や背中が短くて逞しい体つきなら短距離がいいかもしれないし、細身の長身なら長距離がいいかもしれない。心肺機能が高いなら長距離が上手に走れるかもしれない。細身で長距離適正があっても気性が激しいなら中長距離くらいまでかな、など様々な要素で、一番を駆け抜けられるであろう適正距離があります。
牧場で生まれ、トレーニングセンターで所作を学び、人を乗せて指示に従い走ることを覚えて競馬場で競馬デビュー。 ゲートが開いたら、お馬さんは走ることを学んでいるので、レーススタートでゲートを出るも、初めての景色にたくさんの馬が横で走っているので、「何だろう?」と思いながら騎手の指示通りに走ります。知らない景色に物見したり、先頭に立つために前を追いかけたり、横にいる仲間と並んで仲良く走って楽しんだりと、はじめのうちはレースという理解は全くないのでデビュー戦はバラバラした戦いになります。
レース前には必ず競馬の練習、「調教」を行いますが、調教→レース→調教→レース→放牧で一休み→調教…が競走馬のお仕事。競馬を覚え、この流れを反復することにより、お馬さんは調教を行うとレースが近い事を感じ取ります。レース本番を思い出して、「走ってやるぞ!」と入れ込む子や、逆に、調教は「練習だから〜」と真面目に走らなかったり様々です。
レースで他のお馬さんと並ぶと走ることをやめてしまい、レース後は疲れた様子なくケロっとして全然目一杯走らないお馬さんもいます。調教も、他のお馬さんが近づいてくると自分でブレーキをかけて相手のお馬さんをわざわざ待ってしまう。こういうお馬さんは、気を抜かせないように試行錯誤しながら競馬をすることが課題となります。
闘争心があってこその「競馬」なので、とってもおとなく闘争心が芽生えないお馬さんは競走馬には向いていないとされています。
2歳で競馬デビューし、年齢を重ねると精神面が大人になり、闘争心が薄れ、走る気持ちがなくなったり、ズルさを覚え、真面目に走らなくなったりもします。年齢を重ねても闘争心が薄れないお馬さんは長く現役を続けられる場合もあります。時折、レースで調子良く勝っていたお馬さんが、走る気持ちがなくなって突然凡走してしまうこともよくあります。
雨上がりの水たまりの上で滑って転んでしまったお馬さん。それ以来、レースで水たまりがあると怖がって競馬にならなくなるお馬さんもいます。
有名な話ですが、無敗の3冠馬、ディープインパクトが菊花賞というレースで、円形のコースを2度周回する長距離のレースに出走しましたが、いつも3コーナーから4コーナーにかけてスパートをかけることを覚えているために、1周目のゴール板を正規のゴールと勘違いして、スパートをかけてしまったというエピソードもあります。